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2022年10月28日(金)
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海洋散骨の違法性について 自分で行うと条例違反とになる可能性も
海洋散骨の違法性について 自分で行うと条例違反とになる可能性も
家族葬や一日葬など新しい葬儀のかたちを選ばれる方は、埋葬(お墓)においても先進的な方法を選ばれる傾向にあります。
なかでも海洋散骨への関心は高く、弊社でも葬儀と合わせてご相談を受けることがあります。そんなときによく「海に散骨することは違法ではないのか」と質問が寄せられるのですが、これがなかなか難しい問題なのです。
今回は、海洋散骨は違法なのかについて解説していきます。
海洋散骨とは
海洋散骨は自然葬の一種で、その名前のとおり海で行う散骨です。日本海洋散骨協会のガイドラインによれば「海洋散骨は、祭祀の目的をもって、故人の火葬したあと、その焼骨を粉状に砕き散布すること」と定義されています。
参考:https://kaiyousou.or.jp/guideline.html
海洋散骨の認知度が高まったきっかけとしてよく挙がるのが、石原裕次郎氏の海洋散骨です。1987年の逝去の際には当時の法解釈の問題で実施が見送られましたが、1991年の法務省の見解が発表された後、湘南での散骨が執り行われました。
海洋散骨は「狭いお墓で眠りたくない」「最後は海へ還りたい」など様々な希望を受けて普及していますが、墓地不足などの社会的な問題を受けて求められている背景もあります。
方法としては、専門業者と契約を結び、船舶をチャーターして沖合で散骨を行うのが一般的です。
海洋散骨は違法なのか
「海洋散骨は違法ではないのか」と疑問や不安を持たれる方が多いですが、現状で違法性は認められていません。ただし、散骨はその行為を禁止する法律がないという、やや曖昧な解釈のもとで行われています。
散骨に関連する法律
散骨の法的根拠に関連する主な法律は2つです。ひとつは「墓地、埋葬等に関する法律」で、第二章四条に「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」と定められています。
二つ目は、刑法190条の死体損壊等です。こちらは「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する」と定められています。
これらの文言は、解釈によっては散骨の違法性を問えるようにも受け取れます。
法務省の見解
散骨は上の法律を根拠に「違法なのでは」と議論されてきましたが、1991年に法務省より以下のような見解が示されたとされます。
「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪(刑法190条)に違反しない」
これが近年の散骨におけるルール(指針)となっており、散骨を実施する業者が根拠として提示しています。
一方で、産経新聞出版社の『ソナエ』編集部が法務省刑事局へ取材を行った際には「そのような見解を出したことはない」と否定されているそうです。
参考:http://sonae.sankei.co.jp/howto/faq/detail/id=1418
やはり現状では、散骨は違法とは言えないけれども、公に認められた葬送とは言い切れないグレーゾーンと表現できるでしょう。
条例によって規制される場合も
散骨は、地域によっては条例で規制されている場合があります。地域住民の反対、観光資源や漁業への影響などを理由に、全国各地で条例が制定されています。
なかでも北海道長沼町は、墓地以外での散骨を禁止した最初の条例といわれています。その後も各地で条例が制定されており、令和以降も鹿児島県伊佐市や熊本県南阿蘇村で施行されました。
このような地域での散骨は、民事訴訟などのトラブルに発展する恐れがあります。触法行為ではないからといって、自由にどこでも散骨を行えるわけではないのです。
海洋散骨が広まる背景
法整備が十分ではないにもかかわらず海洋散骨が広まるのは、どのような背景があるのでしょうか。
社会構造の変化
社会的な問題を背景として伝統的なスタイルのお墓から遠ざかる動きが広まっており、永代供養式の納骨堂や散骨への関心が高まっています。
まず、都市部の墓地への人気集中や多死社会などを背景として、「お墓不足」が社会問題となっています。望んだ場所でお墓を買えるわけではないのが現状です。
また、生涯独身率の上昇や核家族化の進行によって、お墓の継承問題も深刻化しています。こうした様々な要因から、お墓を持つこと自体が難しくなってきているのです。
散骨への関心の高まりは社会構造の変化を起因としたもので、必然的な変化ともいえるでしょう。
葬儀やお墓に対する価値観の多様化
社会構造の変化によって、葬儀やお墓に対する価値観が多様化していることも、散骨が受け入れられている大きな理由でしょう。
葬儀では、親しい人たちだけで執り行う家族葬や、通夜を省略する一日葬などを選ぶ方が増え、お墓でも永代供養墓や自動搬送式の納骨堂など、今までになかった葬送のかたちが急速に広まっています。
永代供養墓や納骨堂については、以下の記事でも詳しく解説しています。
「永代供養墓とは どんな種類やデメリットがあるかを解説」
「永代供養の納骨堂の選び方 種類や費用から考えるポイントとは」
海洋散骨に求められるマナー
散骨によって公共の福祉に反するような問題が生じた場合、散骨は取り締まりの対象となる可能性があります。そのため散骨を行う際は、節度を持った行動とマナーの徹底が求めれます。
自分で勝手に散骨を行わない
まず前提として、散骨は自分で勝手に行わないことが求められます。知識もないまま散骨を勝手に行うと、地域住民とのトラブルの可能性や、観光・漁業への損害など、民事訴訟などの問題に発展しかねません。
とくに海洋散骨においては沖合で実施する必要があるため、専門業者を利用することが基本となります。
服装の配慮
葬送の場においては喪服の着用が原則となっていますが、こと海洋散骨においては喪服は避けるべきと考えられ、平服(普段着)の着用が推奨されます。
その理由としてまず、安全面の問題が挙げられます。業者にもよりますが、散骨では大きな船をチャーターするわけではありません。船上という不安定かつ足下が濡れる場所で、革靴やヒールのある靴はふさわしくありません。
また、船上では太陽や風を遮るものがないため、寒暖の調整をするためにも平服が推奨されます。
ほかにも喪服を避ける理由として、地域住民や観光客に対する配慮が挙げられます。
環境への配慮
遺骨だけでなく副葬品も海へ流す場合、環境への配慮が求められます。「お菓子などは包装をすべて外す」「献花は花びらだけ」など、海を汚さないためのマナーを徹底しなければいけません。
副葬品にまつわる注意事項は、業者の案内に従っていれば問題ないでしょう。
遺骨を粉末にする
基本的に国内の業者を利用していれば気を配る必要はありませんが、遺骨は1~2ミリほどの粉末にするのが慣例となっています。通常は機械を用いてパウダー状にまで粉骨されます。
まとめ
海洋散骨は違法な行為ではなく、現状では慣習として容認されているかたちです。ただ、明確なルールがないぶん、散骨にあたっては節度を持った行動が求められます。
弊社「とむらび」では葬儀後のアフターフォローも承っております。お墓(埋葬)についての疑問やお悩みも、お気軽にご相談ください。